東日本大震災復興支援俳句コンクール 入選作品
ご協力のお礼
このたびの鬼房顕彰全国俳句大会緊急企画 東日本大震災復興支援俳句コンクール
には、3,151句のたくさんの作品が集まりました。
また、規定以上の投句料をお送りくださった方や義援金のみを協力してくださった方も
多くあり、投句料の総額は1,771,900円に上りました。投句料は全額を日本赤十字
社並びにあしなが育英会に義援金として送り届けます。
パンフレットも投句用紙もなしの、皆さんの善意にのみすがった企画でしたが、予想以
上の成果に本当にうれしく思っています。
募集にあたって、特に句の内容に制限を設けませんでしたが、結果的に大震災を詠ん
だ作品が多くを占めました。ここにも皆さんの熱い思いをひしひしと感じました。
広告掲載には俳句総合誌、新聞各社、そして、たくさんの俳誌が貴重な誌面や紙面を
割いてくださいました。ネット上でも紹介いただきました。総合誌や個人からの副賞の協
賛もあり、これも望外の喜びでした。この場を借りて御協力いただいたすべての皆さんに
心より厚く御礼申し上げます。
平成23年9月1日
佐藤鬼房顕彰全国俳句大会実行委員長
高野ムツオ
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泥の遺影泥の卒業証書かな 東 京 曽根新五郎
春の海ただ一揺れで死者の海 千 葉 泉 天鼓
旱星瓦礫の中のランドセル 東 京 宮川 夏
揺るぎなく暑し東北地も海も 小 諸 瀧澤 宏司
星空は常のままなり蚊遣香 狭 山 松本きみ枝
瓦礫にも暮らしの匂い聖五月 仙 台 渡辺 徹
草笛よ卒業式は海の中 白 石 髙橋きよ子
生き残りたる火蛾として地べた這ふ にかほ 齋藤 俊次
赤鱏に乗りて遊べや子等の霊 松 戸 織田 孝正
みちのくの山河頭を上げ梅雨迎ふ 川 崎 菅田 栄子
溝板の烏賊に雪積む鬼房忌 鎌 倉 小川 求
悉く死者のこゑなり春怒濤 札 幌 安田 青彦
黙禱を幾度もして夏終る 一 関 小山 尚宏
募金しか出来ぬはがゆさ聖五月 鎌ヶ谷 岡林 稲甫
牛の瞳に沖の夏雲立ち上がる 岡 山 井上 幹彦
雲の峰ふたたび漁をはじめしと 柏 物江 里人
少年と青年との間新樹光 福 島 佐藤 好江
花の下生きとし生ける者同志 さいたま 蛭川那智子
ずうずう辯の暑い語りを聴き申す 八千代 市川 翠峯
梅雨の灯を寄せて被災の友へ文 前 橋 清水 治
地震あとの寒星汀に集まり来 佐 野 山野井朝香
荒梅雨は賢治のこゑぞ祈りをり 浜 松 石橋 朝子
「生きねば」と老女水に浸りし桜咲く 渋 川 日野真沙子
父の顔冷たかったと遺児記す 北九州 本田惠美子
再生は常に海なり夏鷗 流 山 増田 陽一
瓦礫にも番地がありて姫女苑 青 森 佐々木とみ子
孟蘭盆会いまだ瓦礫の中に人 岡 山 小川 房子
蕗・わらび・こごみ・たらの芽・放射能 坂 出 真鍋 純一
家の失せ片蔭の失せ己が影 仙 台 内山かおる
インク吸ふ万年筆や去年今年 神 戸 杉岡 壱風
行方不明者の声の集まる夏の雨 栃 木 秋元 幸治
晩年を青田の雲と歩みをり 宮 城 古山のぼる
十藥のかたまり震災の亡き人ら 多賀城 高橋 つる
魂帰り来よ飛魚の背に乘って 宮 城 土見敬志郎
みな土にかへると言へどカンナ燃ゆ 東 京 瀬古 篤子
殺処分きまりし牛に緑雨かな 西 宮 藤森 秀子
夏草やみちのくびとの目の光 向 日 松重 幹雄
開くたび墓標が見える揚花火 石 巻 土屋 遊蛍
人を焼く煙の上に雲の峰 大 阪 上野まさい
緑さす制御不能の原子炉に 福 岡 田代 博史
瓦礫じゃない私の家です立夏です 北 上 松田 正徳
鉄線花東北人は立ち上る 北九州 中島直四郎
寒立馬その先にまだ北のあり 入 間 藤原 玲子
夜空にも鈴蘭が咲くイーハトブ 大 崎 阿部 菁女
コーヒーにミルク線量計はどこだ 川 口 山﨑 十生
頬を撫で生きよ生きよと青葉風 札 幌 斎藤 紅香
白藤の手招き母と思ひたる 福 島 関 春翠
あどけなき顔の被災者花はこべ 熊 谷 渡邊 氣帝
靴底に若葉一枚光りをり 愛 知 関 英治
給水の列はなれずに紋白蝶 宮 城 藤原 恪子
みちのくの瓦礫の中の卒業歌 春日部 杉 良介
頑張るな無理をするなと初夏の風 川 崎 斎藤 文子
避難所のたそがれ長し合歓の花 仙 台 畑中 次郎
故人みな合歓の花なり眠るなり 西東京 野坂 紅羽
余震なほ野に麦秋の渇きあり 流 山 北川 昭久
みちのくに続くこの空梅雨の月 調 布 佐藤まつこ
老いるとは生き残ること辛夷咲く 筑 西 大森 薫
夏潮や墓標はすべて海を向く 藤 枝 山村 昌宏
海底の御霊の数や星明り 東 京 小泉 一代
秋風や詠まねば消ゆる津波悲話 仙 台 田崎 英治
非日常やがて日常蠅叩き 東 京 森 直子
水母なす地震の国や愛深む 宮 城 俘 夷蘭
東北へ海ある方へ青葉騒 福 岡 松田ゆう子
見えるもの見えて五月の孤独かな 栃 木 牛丸 幸彦
陽炎は鯨のあくびあさきゆめ 川 崎 竹中 華
花冷や瓦礫の下の家族写真 仙 台 井筒 みほ
大津波さらはれし人虹に立て 河内長野 植田 一美
卯浪寄すあとかたもなき漁港かな 狛 江 岩野 記代
瀞早瀬瀬尻瀬頭香魚の夢 弘 前 吉川不二保
亡き人を亡きとは云わず蛍狩 伊 丹 西 史夏
御詠歌の中まで春潮満ちあふれ 西 宮 藤田 踏青
春雷の一撃に我在りと思ふ 遠 野 松本 良子
息をせぬ塩漬の田や大旱 さいたま 池田 雅夫
子が親を親が子捜す日の盛り 大 崎 安海 信幸
物言わぬものの芽吹きているばかり 大 垣 伊藤 昭道
春灯に還り来る音か海鳴りか 津 山 永禮 宣子
今日と明日つなぐ代田の大夕日 富 山 岡田 静子
水筒に父のイニシャル栗の花 深 谷 金子 斐子
短冊に復興の二字星祭る 神 戸 岸下 庄二
短夜や田を畑を捨て避難所に 相模原 竹内 時子
今日会えば明日も会うと夏燕 仙 台 宮崎 哲
夏雲や供花に加えし野辺の花 渋 川 吉井美代子
新緑やパレットに溶く我が想ひ 草 加 吉田 武峰
胎動のかすかにありて冬菫 富 山 平野もとみ
復興を土手の蕨と祈りけり 大 阪 千坂 希妙
夕焼けて何にもない町ゆやけ色 仙 台 竹中ひでき
ひこばえや伸び行く先の放射能 東 京 山田由紀子
攫われしたましい乗せて揚羽蝶 栃 木 清水 智子
吉里吉里の老女は如何に南風吹く 浜 松 村松きくゑ
夏雲や巨岩一つを祈りとす 栃 木 中井 洋子
亡き人の表札今も枇杷は黄に 多賀城 斎院つねよ
墓碑名は土葬の番号夏至来たる 町 田 赤崎ゆういち
もの言わぬどくだみの群勝手口 多賀城 石井 朱美
夏燕智恵子の空を守るごと 浜 松 戸塚 きゑ
この道に仏待つかと著莪に問い 高 松 土居紀久惠
海が待つ日焼の蜑の大きな手 登 米 今野 公一
草笛や誰に聞かせてゐるのだらう 苫小牧 齊藤まさし
生きてまた誘蛾燈より死者の声 町 田 伍藤 暉之
麦飯や老いゆく影の凛として 塩 竈 山田 桃晃
三面鏡津波うつして沈みけり 仙 台 中村 春
椿落つ地よりも深きところまで 東 京 吉田 尚子
あるきだすわたしの影と人の影 一 宮 大島多津子
草いきれひとりの空の広かりき 福 岡 乙藤とし子
青柿や夫は余震の度優し 仙 台 山内 栄子
津波跡より万の足音鳥帰る 佐 野 髙槁和か子
ふくしまの風のそれから梅は実に 栃 木 鯉沼 桂子
みちのくの人には見ゆる虹のあり 仙 台 関根 かな
天に星地に満天星の花の喪よ 草 加 武良 竜彦
これより下家建てるなの碑破傘 石 巻 三浦ときわ
遠雷や巻尺の端戻りくる 栃 木 伏木 ケイ
読本に墨塗りしころ夜の蟬 能 代 武藤 鉦二
上皇も世阿弥も流人朴の花 流 山 根本 三穂
荒梅雨や田に置きざりの船傾ぎ 珠 洲 中川 雅雪
奥能登に粗塩煮つめ炎暑光 富 山 神保 弥生
瓦礫より拾ひし写真陽炎へり 尾張旭 古賀勇理央
桑の実や乙女の頃の眼の光 宮 城 永野 シン
五月雨や御霊となりしランドセル 小 平 圡居ノ内寛子
声かけて仏前に初大胡瓜 多賀城 阿部 五一
祈ること泣くこと終戦の日の記憶 高 崎 吉田 未灰
無言なる被災地の風草は実に 宮 城 日下 節子
瓦礫へも影を落として夏の蝶 宮 城 伊澤二三子
ベルリンの壁のかけらに新樹光 町 田 永井 詩
ほんたうの空よ還れと囀れり 津 草地 明子
夏蝶や震災以後の空のあを 熊 本 加藤いろは
梅雨満月瓦礫に捜す父・母・子 北九州 新田千津子
震災地凍つ墓一基立ち残る 西 条 小西 領南
すこやかであれば良しとす白絣 高 崎 岡田 安子
飛魚と溺死少年天を翔ぶ 我孫子 小林真智子
万緑や生きるといふは祈ること 神 戸 木内美恵子
返信が海の底より届く夏 仙 台 山田 史子
草よ茂れ捨てられし牛さまよえる 静 岡 岸田 幸雄
あざなへる縄の重さや暑に耐ふる 那 覇 鳩山 博水
春障子開ければ母の居るやうな 仙 台 丸山みづほ
瓦礫より南瓜の蔓の這ひ上がり 川 口 知念 哲夫
余震なほ光ざわめく植田かな 仙 台 手老 省三
半夏生なみだは海の味がする 富 山 柄沢 恭子
阿弖流為の駆けし野山よ夏薊 横 浜 三森 梢
陸に上がる以前のわれら夏の水 アメリカ 宇井 十間
言霊のたすくる国ぞ風薫る 筑紫野 幸田はるみ
祖父の牛父の牛少年の汗 習志野 青木 信子
青ぶどう青い影して祈るなり 野 田 市川 唯子
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